ペクチンって何?
ペクチンは果物や野菜に含まれる天然由来の多糖類である。
主に細胞壁の中に存在し、その構造と硬さを担っている成分だ。実感としてわかりやすいと思うのは、果物が熟して過熟になる時だ。これはペクチンが分解され果物が軟らかくなるわけだ。
特にリンゴの皮や芯、柑橘類の皮にはペクチンが多く含まれる。食品製造においてペクチンはゲル化剤、増粘剤、安定剤として使用されている。つまり様々な製品の食感や安定性に貢献しているといえる。
ちなみに語源はギリシャ語の「pektikos」である。凝固や凝結を意味し、ゲル状構造を形成する重要な役割を担っていることをそのまま反映している名称である。
こちらの動画では実際にリンゴからペクチンを採る過程を実演してくれている。短い編集をしてくれていて見やすいので是非見てほしい。
ゲル化剤って?
余談だがゲル化剤とは、ゲル化を誘発し、液体溶液をゲル化させる特定のタイプの質感を出す物質、いわゆるテクスチャライザーである。(下記参照)
特にゼリー、ジャム、デザート、そしてヨーグルトのような乳製品の製造において重要な成分である。ゲル化剤は水分子を捕捉するネットワークを形成する作用がある。この作用によって粘度を高め、ゲル構造を作り出す。
一般的なゲル化剤には、ペクチン以外に寒天、ゼラチン、カラギナンなどがある。どれもよく聞いたり見たことがあるんじゃないだろうか。
テクスチャライザーって?
さてさらっと言った上記のテクスチャライザー。これは主に食品に添加される物質で、その質感、つまりテクスチャーを変更し、より魅力的で口当たりの良いものにする物質である。
食品の粘度、口当たり、安定性を変えることなどができる。一般的なテクスチャライザーには、ペクチンや上で揚げた他のゲル化剤はもちろん含まれるし、他にもデンプン、セルロース誘導体などがある。こうしたテクスチャーは乳製品、ソース、スープ、焼き菓子など様々な製品に広く使用され、望ましい食感を実現し、食品の全体的な感覚を向上させるものだ。

ペクチンの実際の利用、用途
ペクチンは食品産業においてゲル化剤として一般的に使用されている。そしてペクチンはゲル形成特性の他に、酸性タンパク質飲料の安定剤、焼き菓子の脂肪代替、ヨーグルトやデザートのテクスチャライザーとしての役割も担っている。
また、ペクチンの抽出に使用する果実の種類や熟度によって最終製品の硬化特性に大きな影響を与え、ジャムやゼリーの食感の違いの一因となる。
抽出作業は上の動画と基本的に変わらない。通常ジュース製造の副産物である柑橘類の皮とリンゴの搾りかすから行われるのだ。柑橘類の皮は高メトキシルペクチンで、従来のジャム作りのように糖分が多く、酸度の高い環境に適している。一方、リンゴのペクチンは低メトキシルであることが多く、低糖・低酸の用途に適している。
また、ペクチンの用途は食品業界だけでなく医療分野にも及んでいる。食物繊維の一種であるペクチンは体内をほぼそのまま通過する。そのため満腹感を得ることができダイエットに役立つ可能性があると考えられている。
また、ペクチンの構造上、水の存在下でゲル化するため、消化を遅らせたり、血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを減少させる効果があるともいわれる。一部の研究者たちはペクチンが特にがん治療における標的薬物療法の一部として、薬を体に届ける役割を果たすのではないかとそちらの方面でも研究をしている。
メトキシルペクチンについて
こちらは余裕ありの人向けの余談。メトキシルペクチンは一般的にハイメトキシルペクチンと呼ばれ、メトキシル化度の高いペクチンの一種のことである。
メトキシル化度とは、ペクチン分子に結合しているメトキシル基(-O-CH3)の数を指す。これはペクチンのゲル化特性に影響を与える化学構造だ。
高メトキシルペクチンはゲルを形成するために糖と酸の存在を必要とし、一般的に伝統的なジャムやゼリーのような高糖度の製品に使用される。化学的にゲル化が起こるのは高い糖濃度と低いpHがペクチン分子同士を接近させ、水を閉じ込めるネットワークを形成してゲルを作るからである。