ホルマリン漬けってよく聞くけどホルマリンってそもそも何?
ホルマリンとはホルムアルデヒドの溶液である。
通常、約37%のホルムアルデヒドガスと安定剤として10~15%のメタノールを含む無色の液体だ。
強力な抗菌剤、抗真菌剤、殺菌剤であり、強い刺激臭がある。そして後述の細胞内の生体物質を安定に保つ効果があることから生体保存のために用いられる。
またこの溶液は生体保存に役立つ一方で、生きている人間にとっては発がん性物質であり、人の健康を守るために暴露を制限する必要がある。
ホルマリンの発見
ホルマリンの歴史は19世紀半ばにロシアの化学者アレクサンドル・バトラフが初めてホルムアルデヒドを合成したことに遡る。
ただ、工業規模で生産されるようになったのはそれから数十年後のことで少しギャップがある。
ホルマリンという名称自体については、1867年にドイツの化学者であるAugust Wilhelm von Hofmann、このホフマンによって初めて使われることになる。
ホルマリンの用途
理科室のホルマリン漬け以外にもホルマリンは工業用および商業用として幅広く使用されている。
生命科学領域でいえば、タンパク質や核酸(DNAやRNAなど)を架橋・固定化する能力があるため、生命科学、病理学などの医療・研究分野で組織サンプルの保存によく使われている。
またあまり知られていないところでは繊維産業も。折り目やシワを防止するための仕上げ剤として使用されることがあったりする。
代わったところではエンターテイメント的な産業でも重要で、樹脂やプラスチックの製造にも利用されている。
身近に有名なところでは木製品も挙げられる。特に尿素-ホルムアルデヒド樹脂やフェノール-ホルムアルデヒド樹脂。こうした樹脂は合板などの木製品の製造に広く使われる物質です。
この2つの樹脂については備考欄下部にまとめたのでぜひ参考に。
ちなみにこちらは尿素-ホルムアルデヒド樹脂の生成動画。
その他に良くない使われ方として、ホルマリンは違法に食品の不純物混入にも使われていて問題になっています。
一部の悪質な食品業者はなんと魚介類の保存期間を延ばすために、ホルマリンを防腐剤として使用することが知られているのだ。
先述の通り、ホルマリンの毒性や発がん性から、もちろんこのような行為は危険で、ほとんどの国で禁止されているのだが。
備考
アウグスト・ヴィルヘルム・フォン・ホフマン
ホルマリンの命名者、アウグスト・ヴィルヘルム・フォン・ホフマン(1818-1892)は、19世紀に有機化学に多大な貢献をしたドイツの化学者です。ホフマン脱離が浮かんだ方も多いかもしれないがそのホフマンさんです。
彼はギーセン大学でユストゥス・フォン・リービッヒの下で化学を学んだことに始まります。こちらは高校化学でもお馴染みのリービッヒ冷却器のリービッヒです。
ホフマンは初期の研究ではコールタールとその誘導体に焦点を当て、アニリン染料開発の基礎を築くなどの成果があります。
具体的にはコールタール由来の化合物であるアニリンの研究により、最初の合成染料を生み出したわけです。この発見は合成染料産業の発展の基礎となり繊維製造業を一変させるものでした
また、有機化学の合成と分析のための体系的手法の開発に貢献もしました。彼の研究は、医薬品、染料、その他多くの化学製品に不可欠なアミンを含む幅広い有機化合物に及ぶ。
のちにホフマンはロンドンの王立化学大学で教授を務め、その後ドイツに戻り教育と研究を続けました。業績だけでなく優秀な弟子も多く作り、こうした功績からロンドン王立協会からロイヤル・メダルやコプリー・メダルなど、数々の賞を受賞することとなりました。
尿素-ホルムアルデヒド樹脂 UF樹脂
先述の尿素-ホルムアルデヒド(UF)樹脂は、尿素とホルムアルデヒドの化学反応によって得られる合成ポリマーである。
これらの樹脂はアミノ樹脂の仲間であり、優れた結合特性、高い引張強度、硬度で知られています。
特性と用途
接着剤: UF樹脂はその強力な接着特性により、パーティクルボード、合板、その他プレス加工された木材製品の製造に広く使用されている。
成形コンパウンド: UF樹脂は、電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性に優れ、電気継手、ハンドル、ボタンなどに使用されている。
発泡体: UFフォーム断熱材は、断熱性、遮音性に優れ、建築に使用されている。
課題: UF樹脂は時間の経過とともにホルムアルデヒド・ガスを放出する可能性がある。悪名高いシックハウス症候群の原因である。
これは実感として新しい家具などを買ったあとに体感した人もいるかもしれない。
室内空気の質が未だに懸念されている。こうしたことから多くの国で規制や基準により、UF樹脂を使用した製品からのホルムアルデヒドの放出は制限されている。
フェノール・ホルムアルデヒド樹脂 PF樹脂
フェノール-ホルムアルデヒド(PF)樹脂はフェノール樹脂とも呼ばれ、20世紀初頭に開発された最も古い合成ポリマーのひとつである。
フェノールとホルムアルデヒドの反応によって製造され、ホルムアルデヒド対フェノールの比率や反応条件を調整することによって、その特性を大きく変えることができる。
特性と用途
熱硬化性プラスチック: PF樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、機械的強度で知られるベークライトの製造に使用されている。
ラミネート: カウンタートップ、化粧板、合板のオーバーレイなどに使用され、耐熱性、耐薬品性、耐摩耗性に優れている。
工業用途: フェノール樹脂はブレーキライニング、接着剤、鋳物砂型のバインダーとして利用される。
利点: PF樹脂は耐久性、耐熱性、耐薬品性に優れている。
では今回はこんなところで。
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