ワセリン チェスブローが広めた石油のゼリー

化学

石油掘削から始まるワセリンの歴史

ワセリンって?

ワセリンは石油ゼリーとしても知られ、パーソナルケアから工業用まで多くの用途がある非常に多用途な製品です。主に知られるところでは140カ国以上で販売されていてスキンケア製品として世界中で広く受け入れられています。他の製品と使われる成分としても、肌の保湿ローションからリップクリームまで、主に保湿に関わるさまざまな製品に広がっています。もちろんオリジナルのワセリンについても今でも世界中の家庭で愛用されています。

歴史とワセリンの名前の由来 エライオン・ヴァッサーこと、みずあぶら

石油掘削の作業員たちは石油掘削の際の副産物としてとれるゼリーに切り傷や火傷に治癒効果があることに気づいていた。そして1859年、化学者ロバート・オーガスタス・チェスブローが石油掘削施設を訪れ、この掘削過程で発生するロッドワックスやリグワックスと呼ばれる蝋状の物質に着目しました。

チェスブローはこの物質に優れた治癒効果があることを発見し研究しました。こうした蝋状物質を精製してワセリンと名付けた製品を開発し、1872年に特許を取得したのです。

ちなみにワセリンという名前は、Wasser(ヴァッサー、ドイツ語で水)とelaion(ギリシャ語で油)に由来します。もちろんその半透明でゼリー状の外観を反映している名称です。

ワセリンに使用されている石油ゼリーは化粧品や医薬品の基準を満たすため、高度に精製・精製されています。ワセリン側としても純度と安全性を保証するトリプル精製プロセスを使用していると主張しています。

色んな用途 実は工業用でも使われている

家庭で軽い切り傷や火傷に使われるだけでなくもちろん病院でも役割を担っています。臨床の場では軟膏のベースとして使用されることが多く滅菌された創傷処置の重要な一部となっています。皮膚科医は特に湿疹などの症状やケミカルピーリングなどの処置の後に、その保護効果を期待してこの製品を推奨することが多い。ワセリンの保湿効果により治癒プロセスを促進し、細菌が傷口から侵入するのを防ぐわけです。

そしてこのように保湿や治癒のためのスキンケアとして広く知られていますが、それ以外にもさまざまな用途があります。例えば化粧品業界ではその滑らかな質感と非反応性から口紅やマスカラなど様々な製品の成分として使用されています。またワセリンは毛髪産業にも応用され、毛髪を水分損失から保護し枝毛をシールする役割を担っています。

その他にも例えば自動車産業では、潤滑油として、また特定の機械部品の錆や腐食から保護するために使用されることがあります。皮革産業では皮革製品のコンディショニングや防水を助けるために使用されています。

しかしワセリンは石油を原料としているためその使用には賛否両論があります。ワセリンに含まれるような高度に精製された石油ゼリーには発がん性はないとされていますが、世界保健機関は不純物の多い石油ゼリーを発がん性のある物質としてリストアップしています。

ですから肌には高品質で精製されたワセリンだけを使うことが肝心です。もしこのウェブサイトを読んでくれている石油掘削作業員の方がいて、日々石油ゼリーが塗り放題だとしても決して塗らないでくださいね。

チェスブローのとんでもマーケティング ワセリンを毎日食べる男 

かつては万能薬として販売されていたこともあります。19世紀末から20世紀初頭にかけてチェスブローはニューヨークを巡り、酸や直火で肌を焼いた後、透明なゼリーを傷に塗り、数日後に治った肌を見せながらワセリンの効能を実証していました。

しかも彼はなんとワセリンを食べていました。それも毎日です。当然すぐに亡くなりそうですが、なんと現代でも長生きと言える96歳まで彼は生きました。もちろんワセリンを食べるのは厳禁です。(煙草を吸って長生きの人もいるという例にも言えますが、こういう時はチェスブローもワセリンを食べなければ106歳まで生きていたと考えるべきだと個人的には思います。笑)

また、これはマーケティングではありませんが、第一次世界大戦中にワセリンは軽度の切り傷や擦り傷の治療薬として軍用キットに含まれていたという、いわゆる信頼の実績もあります。

ワセリンの化学組成、そしてその他特徴など

化学組成を詳しく見てみるとワセリンは鉱物油とワックスの混合物からなり、半固体のゼリーを形成しています。正確な組成や成分の順序は製造工程によって若干異なることがあります。一般には蒸留、脱気、ろ過の3つの精製工程を経て、不純物のないワセリンに仕上げています。

ワセリン界隈?で有名な話としては、エベレスト初登頂の際のエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイは、ワセリンを使って顔を日焼けから守ったのは有名です。

また、水泳選手が擦れを防ぐために使用したり、スポーツ選手が水ぶくれを防ぐために使用したりすることもあります。寒冷地では、乾燥を防ぐために鼻の穴の内側に塗ることも知られています。

ワセリンは外用としては安全ですが、もちろん先述のチェスブローのように内服したりしてはいけません。ワセリンは体内で代謝されず、もちろん栄養的な効果も期待できません。飲み込んだ場合、大量に摂取すると下痢や腹痛、咳が出ることがあります。

また、環境への影響という点にも一応言及をしておくと一般に石油製品の採掘と精製は、原油流出や温室効果ガスの排出など環境に大きな影響を与えます。しかしワセリンは保存期間が長く使用量も少量で使用頻度も少ないため、他のスキンケア製品と比べて環境負荷自体は少ないと言えるでしょう。

石油掘削の作業にとって厄介者であったワセリンがこれほど世界的に役に立ち、また知られるようになったのは、観察、研究、そして何よりチェスブローのマーケティングの力が大きいといえるでしょう。

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