中関村 中国のシリコンバレー

テクノロジー

中関村ってどこ?

中国のIT産業と言えばシェンチェンが有名であるが、広大な首都である北京の中関村はハイテク研究の集積地として同様に有名になってきている。中国の検索エンジンの百度(バイドゥ)や世界最大級のスマートフォン・メーカーの小米科技(シャオミ)など、多くの中国ハイテク大企業の発祥の地であり既に実績も十分である。

中関村は北京のIT産業とほぼ同意義でもあるが、より具体的には北京の海淀区に位置する中関村サイエンスパークのことである。今や中国のシリコンバレーとも呼ばれ、2万社以上のハイテク企業を抱え、AIからバイオテクノロジーまでの分野に特化した企業が入居する点もシリコンバレーに似た特徴である。

china-805587_1280 中関村 中国のシリコンバレー

北京のIT産業のルーツは、北京大学や清華大学などの名門教育機関に遡ることができる。高度なスキルを持つ労働力の育成や、イノベーションと起業家精神の文化の醸成に大きく貢献してきた。この二つの大学自体はMITやカーネギーメロン大学というよりはオックスフォード大学やケンブリッジ大学のような総合的な大学であり、13億人の中国のトップの頭脳が集まっているともいえる。

北京はシリコンバレー同様とまではいかないが、豊富なベンチャーキャピタルに支えられたスタートアップ・エコシステムが盛んで「ユニコーン」企業(企業価値が10億ドルを超える未上場の新興企業)の数は世界でもトップクラスである。

こちらは中関村の位置。スクロールしたり拡大をすると北京大学や精華大学を始め大学が周囲に沢山あるのがわかるはずだ。

シリコンバレーと中関村の違い

大きな違いは行政との密接な関わりである。

エンジェルのような民間投資家に支えられる西側諸国のイノベーションとは異なり、北京のハイテク産業は政府から大きな影響と指導を受けている。実際地理的にも北京を歩くとわかるが中央から中関村はそこまで離れていない。北京は、中国を世界のハイテクリーダーにすることを目指す「メイド・イン・チャイナ2025」イニシアティブのような中央の政策、技術進歩を促進する国家政策の恩恵をダイレクトに受けているのだ。

また市政府の野心的な計画「北京AI戦略」は、2022年までに北京をAIの研究開発の世界的な中心地にすることを意図しており、AIの世界的な舞台における北京の地位をさらに強化している。堅調なIT産業は、地元の雇用市場にも大きな影響を与えている。IT産業は膨大な数の雇用を創出し、全国の地方から人材を集め、それを北京の経済成長と発展に結びつけているといえるだろう。

北京のインターネット接続は、テクノロジー・ハブとしての地位と、政府が5Gの急速な普及を推進していることから、他の先進国の大都市と同じく今やほぼユビキタスに近い5Gカバー率で発達している。しかも北京には中国宇宙局(CNSA)がある。月探査や天文1号火星探査など、急成長する同国の宇宙開発計画を担う役割も中関村にはある。

ITの各分野における北京のプレゼンス

世界的にデータ・セキュリティーに対する懸念が高まる中、北京のIT産業は中国内のサイバーセキュリティー技術の開発をリードしている。数多くのサイバーセキュリティー企業や研究機関がありIT業界における北京の地位はさらに強固なものとなっている。

北京のIT産業はハードウェアやソフトウェアの開発に貢献するだけでなく、クラウド・コンピューティングの分野でも大きく前進している。アリババのクラウド・コンピューティング部門である阿里雲をはじめ、中国トップクラスのクラウド・コンピューティング企業が集まっている。

北京のテック・シーンにおける重要な発展は、技術的な自給自足を推進することである。北京市は、そして実際に国家は、外国技術への依存を減らすことを積極的に求めており、自国の進歩に集中することを促している。

北京の「スマートシティ」構想は、IT技術を利用して公共サービスを向上させ、交通管理を改善し、持続可能な発展を促進するものだ。またQRコードこそ日本の技術だが、中国は今や韓国やインドネシアと並び、アリペイやウィーチャット・ペイ(WeChat Pay)といったハイテク大手が牽引し、モバイル決済が主流となりつつ国の一つである。

デジタル・エンターテインメントやゲーム産業における役割も強い。北京には、『Honor of Kings』などの人気ゲームのパイオニアであるテンセントなどの企業がある。ゲーム企業といえば任天堂やソニー、アクティビジョンやEAが浮かぶかもしれないがこうした中国の企業はスマホゲームではかなり圧倒的な力を現在持っている。

ただし中国国内ではゲームはかなり規制されていて子供や青年の年齢層ではほとんどプレーができないので輸出向けの側面がこの産業では強いといえるだろう。日本や韓国といった中国の隣国で、中国のゲーム広告が電車や駅などにかなり多く増えたのはここ数年のことだが、急速に増え、国内のゲームより多いといっても過言ではない気がする。

ハイテクというイメージとは裏腹に、北京のハイテク産業はデジタルデバイドにも取り組んでいる。デジタルリテラシーを向上させ、社会経済的に異なるグループ間でテクノロジーへのアクセスをより公平にする取り組みが進められている。

ビッグデータの台頭も、北京が最前線にある分野のひとつです。北京にはデータ分析を専門とする企業が数社あり、経済や社会の発展のためにデータを活用することを重視する中国の姿勢を反映しています。

こうしたことの他にヘルスケア・テクノロジーでも躍進しており、多数のヘルステック新興企業が同市を拠点に、AIを活用した診断からデジタル治療まで、あらゆる分野に注力している。教育分野でもそうだ。VIPKidのようなEDテック企業は、テクノロジーを利用して学習に革命をもたらした。また世界中が閉じこもった2020、中国はこうした教育テック系の企業のアプリを利用していちはやくリモート授業などが行われた。

シリコンバレーと少し違うのは北京は製造業とより密接な関係があることです。この2つの産業はしばしば協力し合い、産業オートメーションやロボット工学などの分野のイノベーションにつながっています。グリーン・テクノロジー分野でも重要な役割を果たしており、ハイテク企業は環境団体や政府機関と提携し、環境問題に対応するソリューションを生み出している。こうしたことの核となって動いているの地域が中関村なのである。

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