最も重い物質、最も軽い物質

最も重い物質としてボーリング、最も軽い物質として羽根のイメージ 化学


最も重い物質と最も軽い物質。

言い換えるならば、単位体積当たりの質量である、密度が高いものと低いものである。

最も重い物質 オスミウム

オスミウムの性質

まず、最も重い物質はオスミウムである。

元素記号はOs、原子番号76。遷移金属であり、周期表では白金族だ。

Osmium – The DENSEST Metal On Earth!

オスミウムの密度は室温で約22.59g/cm³である。

金は19.3,タングステンは19.2、鉛などは11しかないことを考えれば、オスミウムはダントツに重いとわかっていただけると思う。

固体の状態では青みがかった白色をしている。

オスミウムは密度だけでなく、耐久性と硬度でも注目に値する。

融点はなんと3033℃(5491°F)だ。天然に存在する元素の中で最も高い。

常温では酸素と揮発性の酸化物を形成し、摩耗や腐食に強い。

オスミウムの用途

fountain-pen 最も重い物質、最も軽い物質

こうした高い硬度と環境ストレスに耐える能力から、万年筆のペン先、電気接点、蓄音機の針など、極めて高い耐久性が求められる用途に使われる。

オスミウムの化合物は、ある種のがん治療や顕微鏡検査における組織の染色にも使われる。

その他には、他の金属との合金や触媒に使われることもある。


気体の場合、標準状態での密度で「最も重い」のはラドン(Rn)で、密度は9.73kg/m³である。

最も軽い物質 エアログラファイト

エアログラファイトの性質

最も軽い物質はエアログラファイトである。

エアログラファイトは単体元素ではなため聞き馴染みがあまりないかもしれない。

一言で言えばこれはカーボンチューブの塊である。

相互に接続された炭素チューブのネットワークから作られたもので、ほとんどそれ自体が中空の物質なのだ。

上記のオスミウムの密度は約23g/cm³であったが、エアログラファイトの密度はなんと約0.2mg/cm³である。あえて単位を揃えよう、23000mgと0.2mgだ。

軽いものと比較しても、同体積で包装材のポリスチレンフォームは0.01g、ポリプロピレンは0.9gほどだ。エアログラファイトの0.002gは文字通りの桁違いの軽さである。

炭素チューブで出来ている壁の厚さはわずか数ナノメートル。

この構造が材料内の空気量を最大化し非常に低い密度を実現している。ほとんど物質自体が空気だといえる。

World’s Lightest Solid!

製法としては酸化亜鉛のテンプレート上に化学蒸着法を用いる。

蒸着後に酸化亜鉛は化学的にエッチングされてカーボンチューブ構造を残す。このプロセスによって材料の密度と構造特性を制御することができるわけだ。

エアログラファイトの用途

密度が低いにもかかわらず、エアログラファイトは非常に弾力性がある。

元の大きさの35倍まで圧縮しても壊れず、元の状態に戻る。損傷することなく圧縮したり伸ばしたりすることができるのだ。

更に電気を通すこともできる

こうしたユニークな構造と特性によって、エレクトロニクス分野、特にスーパーキャパシタやバッテリーなどへの利用、また多孔性と表面積が性能を高めるエレクトロニクスやエネルギー貯蔵の用途に有用と言われている。

また読んでいて予想された方もいるかもしれないが熱伝導率も極めて低い

そのため断熱材としての応用も検討されている。

とにかく様々な軽量デバイスやフレキシブルデバイスへの応用の可能性が言及される素材がエアログラファイトである。軽さが求められるものは沢山ある。航空宇宙工学分野の材料から軽量の建材まで無限ともいえる。

その他に言及しておくこととしては、軽さでなくその微細構造から。

いわば活性炭のように、汚染物質を吸収する能力を利用した水質浄化システムなどの環境分野への応用の可能性もある様々な可能性を秘めた材料でもある。

以下追記で、軽いものランキング、重いものランキング、軽い金属ランキング、重い金属ランキングについて。

世界一軽いものランキング

では早速結論からということで、軽い物質ランキングからベスト5を見ていこう。

世界で一番1番軽いものは何か?既に上でエアログラファイトと答えたじゃないか?と思われるかもしれないが、こちらのランキングは気体も含む。

一番軽いものは絶対零度のようにこれ以上ないものである。

ではまた、結論の一番からどうぞ。(時短系ブログ)

  1. 真空 – 0 g/cm³
    最も軽い 「物質 」は完全な真空。質量を含まないため密度は0g/cm³である。魔法瓶や布団のパッキングでも真空は使ったり聞くかもしれないがまだまだである。ほとんど真の真空は自然には存在しないが宇宙空間についてはかなり真空に近く、微粒子しか含まないものとなっている。
  2. 水素ガス(H₂)-0.08988g/L(0.00008988g/cm³)。
    水素は最も軽い化学元素で最も密度の低い気体である。密度が空気の約14倍と極めて低く、燃料電池、ロケット燃料、高高度気球などに利用される。しかし可燃性が高いため、貯蔵や輸送に難点がある。水素は宇宙で最も豊富な元素でもあり星や惑星の大気を形成している。
  3. ヘリウムガス (He) – 0.1786 g/L (0.0001786 g/cm³)
    そのまんまと思われるかもしれないが、2番目に軽い元素ヘリウムの気体だ。空気より軽い唯一の希ガスでもある。密度が低く反応性がないため気球、飛行船、MRI装置、深海潜水用混合ガスなどに使用されている。水素とは異なり、ヘリウムは不燃性であるため使い勝手がよい。ヘリウムは重元素の放射性崩壊によって生成され、天然ガスから抽出される。
  4. エアログラファイト – 0.0016 g/cm³
    ここで上記で述べた軽い固体であるエアログラファイトだ。さすがに真空や気体には勝てない。それでも前述の通り最も軽い人工固体材料である。
  5. 金属マイクロ格子 – 0.0009 g/cm³
    HRL研究所の研究者によって開発された金属マイクロラティスは、これまでに作られた中で最も軽い金属である。ニッケル-リンからなる非常に多孔質で格子状の構造からなる。この素材は非常に軽量でありながら、驚くほど強靭で弾力性がある。航空宇宙、衝撃吸収、エネルギー効率の高い構造物への応用が期待されている。

世界一重い物質ランキング(世界一重い金属ランキング)

世界一重い物質ランキングはほとんど世界一重い金属ランキングと同じ意味に近い。

なのでまとめてどうぞ。こちらがそのトップ7だ。

  1. 中性子星物質 – ~4 × 10¹ ⁷ g/cm³
    中性子星物質は宇宙で最も密度の高い物質として知られている。大質量星が超新星爆発を起こし、重力で崩壊して陽子と電子が中性子に砕かれることで形成されるものだ。。ティースプーン1杯の中性子星物質の重さはいくらだろうか?答えは約10億トンになる。中性子星物質は通常の地球条件下では存在できず、極端な天体物理学的環境でのみ形成されるため、この密度は理論上のものである。
  2. ブラックホールのコア(理論上) – 無限密度(特異点)
    特異点として知られるブラックホールの核は、アインシュタインの一般相対性理論によれば、物質が重力の力で無限密度に崩壊する領域である。中性子星とは異なりブラックホールのコアは古典物理学では体積を持たないのだ。ということでその密度は数学的に未定義または無限となる。しかし量子重力効果によって真の密度が制限される可能性があるので依然として理論物理学の課題ともその点はなっている。
  3. オスミウム(Os)-22.59g/cm³。
    天然に存在する安定な物質の中で、オスミウムは地球上で最も重い金属である。既に述べたようにコンパクトな原子構造のため、驚くほど密度が高く電気接点、ペン先、特殊合金など、極めて高い硬度と耐久性を必要とする用途に使われる。
  4. イリジウム(Ir) – 22.56 g/cm³
    イリジウムはオスミウムよりわずかに密度が低く、地殻中で最も希少な元素のひとつである。銀白色の耐食性の高い金属で、高温るつぼ、スパークプラグ、深宇宙探査機などに使われている。イリジウムは、恐竜絶滅の原因となった小惑星衝突に関連した地球の地殻層にも高濃度で含まれている。
  5. レニウム(Re) – 21.02 g/cm³
    レニウムは超高密度の遷移金属で、すべての元素の中で最も高い融点の一つ(3186℃)を持つ。その密度と極端な耐熱性は、ジェットエンジン、ロケット推進、高性能電気接点に使用される超合金に不可欠である。レニウムは希少で高価だが、航空宇宙および軍事用途で高く評価されている。
  6. プラチナ(Pt) – 21.45 g/cm³
    プラチナは最も重く、化学的に安定した金属のひとつである。密度が高く、腐食に強く、触媒作用があるため、宝飾品、工業用触媒、医療機器に広く使用されている。プラチナの密度は、実験室のるつぼや特殊な科学機器の重要な材料となっている。
  7. 金 (Au) – 19.32 g/cm³
    金は最も貴重な金属のひとつであるだけでなく、最も重い金属のひとつでもある。その密度と耐酸化性は、宝飾品、貨幣、電子機器に理想的である。腐食せずに電気を通す金の能力は、ハイエンドの電子機器や航空宇宙部品に不可欠である。

よく名前を聞くタングステンやウランなども金のあとに続くが金とほとんど重さに違いはない。

さて、お次は世界一軽い金属ランキングを見ていこう。スマートフォンの部品などを考えながら読むとこのランキングの重要性を実感できるかもしれない。

世界一軽い金属ランキング

世界一軽い金属ランキングトップ10だ。

  1. リチウム(Li) – 0.534 g/cm³
    リチウムはすべての金属の中で最も軽く、密度が極めて低いため、水よりもさらに軽い。柔らかく銀白色のアルカリ金属で、水と激しく反応して水酸化リチウムと水素ガスを生成する。リチウムは、充電式電池、航空宇宙用途、さらには一部の精神科治療薬に広く使用されている。重量が軽く、電気化学的ポテンシャルが高いため、現代技術には欠かせない。
  2. カリウム (K) – 0.862 g/cm³
    カリウムも信じられないほど軽いアルカリ金属で、リチウムよりわずかに密度が高いだけである。柔らかく銀色だが、空気中では酸化により急速に変色する。水と接触すると激しく反応し、水素ガスと発火に十分な熱を発生する。カリウムは生物学的に必須であり、神経機能と細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしている。工業的には、肥料や一部の化学合成工程で使用される。
  3. ナトリウム(Na)-0.968g/cm³。
    ナトリウムはカリウムよりわずかに密度が高いが、水より軽い。アルカリ金属であるため、カリウムやリチウムと多くの化学的性質を共有している。この柔らかい銀白色の金属は理科室で実験した人も多いかもしれないが水と爆発的に反応する。ちなみにその際には水酸化ナトリウムと水素ガスを生成する。テーブルにある食塩こと塩化ナトリウムの形で最も一般的に使用されているといえるだろう。
  4. ルビジウム (Rb) – 1.532 g/cm³
    ルビジウムは、銀白色の外観を持つ、柔らかく反応性の高いアルカリ金属である。リチウム、ナトリウ ム、カリウムよりも密度が高いが、それでも非常に軽い。空気に触れるとすぐに酸化し、水と激しく反応して自然発火することもある。ルビジウムは原子時計、特殊ガラスの製造、特定の生物医学的用途に使用されている。
  5. カルシウム (Ca) – 1.55 g/cm³
    カルシウムは最も軽いアルカリ土類金属で、このリストの最初の4つのアルカリ金属とは異なる。銀灰色の金属で、骨や歯の構造成分を形成し、生物にとって不可欠である。アルカリ金属とは異なり、カルシウムは水との反応が非常に遅い。工業的には、セメント、製鉄、金属抽出の還元剤などに使われる。
  6. マグネシウム (Mg) – 1.738 g/cm³
    マグネシウムもアルカリ土類金属で、カルシウムよりわずかに密度が高いが、非常に軽い。重さの割に強度が高く、航空宇宙産業や自動車産業で非常に重宝されている。別の記事でも書いているが日本の零戦はマグネシウムをうまく使って軽量構造となっていた。マグネシウムはまた、生物学的プロセス、特に細胞内のATP生成にも不可欠である。強烈な白い炎で燃えるので、火工品、照明弾、フラッシュ写真に有用である。
  7. ベリリウム(Be) – 1.85 g/cm³
    ベリリウムは、希少で非常に特殊な金属である。リチウム、ナトリウム、マグネシウムよりも密度が高いが、強度重量比が非常に高い。そのため、航空宇宙、軍事用途、X線窓などで重宝されている。しかし、ベリリウムは粉塵や粉末の状態では非常に有毒であり、吸入すると重度の肺疾患を引き起こす可能性がある。この危険性にもかかわらず、その軽さと強度のユニークな組み合わせは、特殊なエンジニアリング分野での継続的な使用を保証します。
  8. アルミニウム(Al) – 2.70 g/cm³
    アルミニウムは、一般的に使用される構造用金属の中で最も軽い。天然の酸化皮膜により耐食性があり、非常に展性と延性がある。前の7つの金属より密度が高いものの、鉄や銅のような他の構造材料よりはかなり軽い。輸送、建築、包装、家電製品などに広く使われている。アルミニウムはリサイクル性も高く、最も持続可能な金属のひとつである。
  9. スカンジウム(Sc) – 2.985 g/cm³
    スカンジウムは遷移金属であるが、他のほとんどの金属に比べて軽量である。航空宇宙やスポーツ用品用の高性能アルミニウム合金に使用されている。アルミニウムやチタンほど有名ではありませんが、スカンジウムは重量を増やすことなく、材料の強度と耐久性を高めます。比較的希少で高価であるため、広く使用されるには限界がある。
  10. チタン(Ti) – 4.506 g/cm³
    チタンはこのリストの中で最も重い金属だ。だが強度対重量比が高いため軽金属に分類される。チタンはその優れた耐食性、生体適合性、過酷な条件に耐える能力で知られている。そのため、航空宇宙、高性能スポーツ用品などで高い価値を発揮し、近年だとiphone15が採用したことでも話題となった。アルミニウムよりも密度が高いにもかかわらず、チタンの優れた強度は、より薄く、より軽い構造に使用できることを意味するというわけだ。

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