F1カーと一般車の違い

テクノロジー

F1カーと市販自動車、具体的にどう違う?

フォーミュラ1(F1)カーと一般消費者向けの自動車。誰もがF1が早いのは知っているし形状も一目で区別がつくくらい異なる。では具体的にどういったところが異なるのだろうか。

まずF1カーはモーターレーシングの最高峰でスピード、精密さ、パフォーマンスを追求するために設計されている。それに対し一般消費者向けの自動車は、効率性、快適性、安全性、日常使用における手頃な価格のバランスを考慮して設計されている。

この目的やコンセプトの違いが、全体やほとんどの個別のパーツにまで体現されているのである。

概説 F1カーの進化は市販車の進化にも関連

F1の基本的な特徴のひとつはデザインと構造にある。F1マシンはシングルシートで空力効率を優先したオープンコックピットの車である。F1マシンのボディはカーボンファイバーなどの軽量複合材料で作られ、軽量化とスピードアップを図っている。

歴史的にF1とレギュラーカーの開発は別個のものであったが、時には重なり合うこともあった。F1の歴史は、スピードとパフォーマンスの追求の証であり、その革新は競争とF1というスポーツのルールによって推進されてきた面もある。一方で一般車は、先に述べたように消費者の需要、コスト、燃費、安全基準、環境規制などの要因に応じて発展してきた。

メカニズム面では、F1マシンも一般車もエンジン、トランスミッション、ブレーキといった自動車の基本コンポーネントを共有している。しかし、F1カーのこれらのコンポーネントの技術や設計は、はるかにハイスペックで、複雑である。

例えばF1マシンは高度で効率的なハイブリッド・パワーユニットを採用しているが、ほとんどの一般車は依然として伝統的な内燃エンジンを使用している。ブレーキシステムもまた、より効率的で強力なもので、時速200kmからわずか数秒で完全に停止させることができる。

F1は市販車と別世界の話でもない。当初はF1用に開発された技術革新のいくつかは一般車にも導入されたこともある。例えば、セミオートマチックのギアボックス、タイヤの摩擦の調整であるトラクションコントロールシステム、そして空力特性などだ。少ない給油で早く走るための空力を考え尽くしたボディは市販車で言えば省エネによるエコに当然つながるということである。

また逆に、電動パワートレインなどは一般車の技術の進歩がF1マシンの開発に影響を与えてきた点もある。

その他にF1における安全基準もまた、一般車の安全機能に少なからず影響を与えている。

カーボンファイバー製モノコック、エネルギー吸収構造、さらにはHANS(ヘッド・アンド・ネック・サポート)装置といった技術は、乗用車に搭載される前にまずはモーターレース用に開発されたものだ。

具体的なF1カーと一般車の違い

ステアリング機構

F1マシンのステアリングホイールには、エンジンの出力からマシン全体のバランスまで、マシン性能のさまざまな側面をコントロールするボタンやダイヤル、スイッチが詰まっている。

対照的に、普通のクルマのステアリングホイールには、ホーンといくつかの基本的な機能を除けば、比較的少ないコントロールしかない。

ちなみにこちらはフェラーリのF1カーのステアリングの進化をまとめてくれている動画だ。1990年くらいまでは一般車のようだったのに突如ゲームコントローラーのような進化をとげているように見える。というか今ではゲーミング的なビジュアルをも最早上回って、ジュークボックスやパチンコ台のような賑やかさだ。笑

F1 Steering Wheel Evolution | 1950 – 2023

F1マシンと一般車両の推進システム

F1は長年高性能内燃エンジンを採用してきたが、近年は1.6リッターV6ターボエンジンと2種類のエネルギー回生システムを統合したハイブリッドパワーユニットへと、レギュレーション(規定)がシフトしている。

運動エネルギー回生システム(KERS)とモーター・ジェネレーター・ユニット-熱(MGU-H)は、それぞれブレーキと排熱からエネルギーを回収する。このシステムによりF1マシンは一般車とは別世界のような驚異的なスピードと効率を実現する。

一般車の大半は内燃機関を使用しておりF1マシンよりも大型のものも多い。効率やパワーははるかに劣る。そして環境への関心や、企業における環境投資のシステムが近年整備されてきたことで消費者市場の車ではハイブリッド車や電気自動車へのシフトが進んでいる。

サスペンションシステム

F1マシンのサスペンションは、高速コースやタイトなコーナーや高低差をトラクションを失うことなく通過することを可能にする。マシンのパフォーマンスを左右する重要な部分である。

設計は性能に最適化されていて快適性を犠牲にすることなく硬いセットアップが一般に施されている。

一方、普通のクルマには、さまざまな道やコンディションに対応できる、よりソフトで快適なサスペンションが必要となる点で異なるものだ。

タイヤ

F1タイヤは特定の天候に対応し、最大限のグリップを発揮するように設計された非常に特殊なタイヤだ。このタイヤはソフトコンパウンドのため消耗が早いがレース中の短い時間では卓越したパフォーマンスを発揮する。

逆に一般車は、性能よりも耐久性やさまざまなコンディションに対応できるように設計されたタイヤを使用する。ただでさえ日本は諸外国に比べると健康診断や車検がとにかく頻繁にある国だ。これに重ねて毎度渡航先ごとに路面やコースを考慮してタイヤを変えたり、ガソリンスタンドをピットインのように使ったら維持費がとても持ちはしないところである。

こちらはタイヤメーカーのピレリによるノーマルタイヤとの比較動画。あらゆる状況で優れたパフォーマンスを維持するのがビジュアルでわかると思う。

Pirelli: Comparison between F1 and road tyre

エアロダイナミクス

F1レースを1分も見たことがない人でも明らかにわかるくらいに、F1カーのエアロダイナミクス(空気力学)を考慮した外観は一般車とは別次元である。

F1マシンはそのすべてが空力性能を考慮して設計されている。一般車がそうでないわけではない。風洞実験などは一般的な話だ。それでもF1は遥かに、より高速で、優れたハンドリングを実現するために重視されている点だ。

一方、一般車は空力性能と乗員の快適性、収納力、美観といった他の実用的な考慮事項とのバランスをもっとバランスよく取らなければならない。

日常使いを考えれば明らかだ。F1カーでスーパーに行ったり温泉旅行をするより、それに比べ遥かに安価なNBOXやワゴンRの方が明らかに快適で優れている。。

Formula 1 Aerodynamics with Martin Brundle

車両制御システム

F1マシンは通常のマシンにはない複雑なコントロールをステアリングホイールに多数備えている。これらのコントロールによって、ドライバーはエンジンマッピングやブレーキバイアス、さらにはエネルギー回生設定(エネルギーのリサイクル機構)など、マシンのパフォーマンスを多面的に調整することができる。

普通の車ではこのような複雑な操作はより単純なシステムで自動的に行われるか、あるいはそもそも存在しないこともある。

エンジンマッピング

エンジン・マッピングとはさまざまな条件下で車のエンジンがどのように反応するかを設定するプロセスだ。

電子制御ユニット(ECU)の設定を調整し、燃料噴射、点火時期、吸気量などのパラメーターを調整する。目的はエンジンのパフォーマンス、燃費、排出ガスを最適化することだ。

レースでは予選(パワーの最大化)と、決勝(パワーと燃費およびエンジンの信頼性のバランス)などと異なるエンジンマップを使用することがある。

燃費

F1マシンの燃料消費量は、一般車と比べて天文学的な数字だ。F1マシンは100kmの走行で最大75リットルの燃料を消費することが知られている。

もちろんこれは一般車では実現不可能な水準だ。そしてほとんどの方は実現したくもないだろう。。

燃料費と環境への配慮は消費者にとって大きな関心事であるため、一般車は燃費を念頭に置いて設計されている。人類が全員スピード狂で皆F1カーに乗っていたらと考えると、10年後には気温が10度くらい上がってしまいそうである。

テレメトリー

モータースポーツにおけるテレメトリーとは、車両からピットクルーにリアルタイムでデータを収集・送信することを指す。

スピード、タイヤ空気圧、エンジン温度、燃料消費量など、さまざまなパラメーターを車両全体のセンサーがモニターする。このデータはワイヤレスでチームのエンジニアに送信され、エンジニアはそれを分析することで、戦略を決定したり、マシンの潜在的な問題を特定したりする。テレメトリーは、レースにおけるパフォーマンスと信頼性を最適化するための重要なツールである。

もちろんこれは一般車には基本的についていないシステムだ。数は限られるが先進的なコンシューマーカーにもテレメトリーが搭載されているものもある。しかしそれはF1カーのようなパフォーマンス・チューニングというよりも、主に診断と安全性のために使われている。

カーボンファイバーとスチールの重量と強度比較


重量: 炭素繊維は鋼鉄よりもかなり軽い。炭素繊維複合材料は鋼鉄の4分の1以下の重量しかない。この重量の差は、航空宇宙、自動車、スポーツ用品など、重量を最小限に抑えることが性能と効率に不可欠な産業では極めて重要な要素である。

強度: 炭素繊維は高い引張強度(引っ張られたときの強度)と剛性で知られている。強度対重量比を比較すると炭素繊維複合材料は一般的にスチールよりもはるかに強い。正確な数値は炭素繊維の種類や製造工程によって異なるが、炭素繊維は従来の鋼鉄の数倍の引張強度を持つ。

ただし、炭素繊維素材は強度に方向性があり(異方性)、繊維の配列方向で最も強くなることに注意する必要がある。一方、スチールはあらゆる方向に一貫して強度を維持する(いわゆる等方性だ)。

トランスミッション

F1マシンは高度に洗練されたセミオートマチックシーケンシャルギアボックスを使用している。

これらのトランスミッションは、ドライバーがギアチェンジのために手動でクラッチペダルを操作する必要がないので極めて素早いギアチェンジを可能にしている。具体的にはなんとミリ秒単位でギアチェンジを行うことができる。

ギアボックスの操作はというとステアリングホイールの後ろにあるパドルシフトで行う。急加速に対応できる仕様だ。

一般的な車にはクラッチペダルとギアスティックを使ってドライバーが手動でギアチェンジを操作するマニュアルトランスミッションか、自動的に適切なギアを選択するオートマチックトランスミッションが搭載されている。

これらのシステムはやはり日常走行によくある速度や条件下での使いやすさ、快適性、燃費効率を考慮して設計されている。

ブレーキ

F1カーのブレーキシステムは材質から異なる。またもやカーボンファイバー製のブレーキディスクとパッドを使用している。この素材により超高速からの急減速を可能にし超高温でも効果的に作動し、そして先述の通りもちろん従来の素材よりもはるかに軽量である。F1のブレーキは1000℃まで耐えることができる。

通常の車ではスチール製または鋳鉄製のブレーキディスクと有機またはセラミック製のブレーキパッドなどが一般に使用されている。これらの材料は通常の走行速度や条件下では十分であり、耐久性、費用対効果、通常の使用温度下での性能のために最適化されているともいえる。

ブレーキ・バイアス

ブレーキ・バイアス(またはブレーキ・バランス)とは、車両の前輪と後輪の制動力の配分のことである。ブレーキ・バイアスを調整することで、ドライバーやエンジニアはフロントとリアの制動力を変えることができ、ブレーキング時のクルマのハンドリングに影響を与える。

バイアスをフロント寄りにするとより安定したブレーキングが可能になるが、アンダーステアにつながる可能性がある。逆にリア寄りにするとオーバーステアにつながる可能性がある。

多くのレーシングカーではドライバーはコックピットからブレーキバイアスを調整し、変化するレース状況やタイヤの摩耗に対応することができる。

まとめと個人的要望…w

以上となるが、上記のようなことを知らなくてもF1は楽しいし、知っていたらより深く楽しめるかと思う。

といっても今はJスポーツチャンネルやガオラなど?のスカパーなどのケーブルテレビに入っていないとほぼ見れない。。

F1は放映料が高くて大変なのだと思う。ただそれでもケーブルテレビだけでなく、昔のように民放でも深夜などにまた放送してほしい。それを願って締めくくりたいと思う。。

コメント

タイトルとURLをコピーしました