ルーカス試薬、アルコール級数の判定のための試薬
生徒: 有機化学の本を読んでいるのですがルーカス試薬で行うルーカス試験というのがよくわかりません。理解するのを手伝ってもらえませんか?
先生: もちろんです。喜んでお手伝いしますよ。ルーカス試薬は無水塩化亜鉛を濃塩酸に溶かした溶液です。
生徒:一体それがなんの役に立つのですか?
先生:有機化学でアルコールを分類し、一級、二級、三級アルコールを区別するために使用されるんですよ。
生徒: つまりアルコールの分類のための試薬ですか?
先生:そういうことです。ルーカス試薬はアルコールと反応を起こし、その結果、アルコールの種類によって観察できる効果が異なるのです。
生徒:便利そうですね。どのような仕組みなのでしょうか?
先生: アルコールがルーカス試薬と反応すると、置換反応を起こして塩化アルキルを生成します。第三級アルコールはルーカス試薬とほぼ瞬時に反応して塩化アルキルを形成し、これは混合液に不溶で、濁った溶液や分離層を作ります。要するに第三級アルコールではすぐ白濁します。
生徒: 二級アルコールと一級アルコールはどうなるんですか?
先生: 二級アルコールは反応が遅く、塩化アルキルを形成して濁りを生じるまでに数分から1時間かかります。一方、一級アルコールは、ルーカス試薬と常温では反応しません。加熱して時間を書ければ反応させることもできますが、その場合でも反応は不完全なことが多いです。
生徒:では、反応の速さでアルコールの種類がわかるのですね。
先生:その通りです。反応の早い順で、そのアルコールが第三級、第二級、第一級、と区別できます。
学生:なるほどですね。ありがとうございました!
無水塩化亜鉛とは
白色の結晶性固体で式はZnCl2。水に非常に溶けやすく潮解性も持つ。強力なルイス酸であり有機合成の触媒や脱水剤として、繊維産業や製紙産業の様々な用途に使用されている。
また、木材の防腐剤や、鉄や鋼鉄の錆を防ぐ亜鉛メッキ工程にもフラックス剤として使用されることもある。
塩化アルキルとは
塩化アルキル、またはアルキルクロライドは、アルキル基に結合した塩素原子を含む有機化合物である。他の有機化合物を製造する際の中間体として一般的に使用される。プラスチック、医薬品、溶剤の製造など、様々な工業用途がある。
例としては冷媒として使われていた塩化メチルや塩ビでおなじみの塩化ビニルなどは代表的な塩化アルキルである。
アルコール級数に応じた反応性の違い
アルコールの級数による性質の覚え方
まずシンプルに概要を言うなら、
第一級アルコールがもっとも立体障害が小さく、沸点は低い、脱水反応も起こりにくい。
1,2,3級とこれらは高まっていく。
逆に求核置換反応や酸化反応や潮解性については、第一級アルコールがもっとも起こりやすい。
1,2,3級とこれらは下がっていく。
三級アルコールの反応
三級アルコールはルーカス試薬と最も迅速に反応。
室温条件下で三級アルコールを含む溶液にルーカス試薬を加えると数秒以内に反応が進行する。
反応によって生成する塩化アルキルは水に不溶であるため溶液は直ちに白濁または二層に分離します。この即時の白濁は試料が三級アルコールであることを示す決定的な証拠となります。
例えばtert-ブタノール((CH₃)₃COH)をルーカス試薬と混合するとほぼ瞬時に白濁が観察されます。
二級アルコールの反応
二級アルコールはルーカス試薬と反応しますがその速度は三級アルコールよりも遅くなります。通常、室温では反応が完了するまでに数分から1時間程度を要する。
溶液はしばらくすると徐々に曇りはじめ時間の経過とともに白濁が増していきます。「遅延した白濁」は試料が二級アルコールであることを示す特徴的な反応パターンといえる。
例えばイソプロパノール((CH₃)₂CHOH)をルーカス試薬と混合すると数分後に白濁が始まり時間とともに増していきます。
一級アルコールは反応しない?
一級アルコールは通常、室温ではルーカス試薬とほとんど反応しません。
一級アルコールからのカルボカチオン生成は非常に不安定なため室温条件下では実質的に反応が進行しません。溶液は透明なままで何時間経過しても目に見える変化は観察されません。
反応を進行させるためには加熱が必要ですがそれでも反応は不完全なことが多いです。この「反応しない」という特性が試料が一級アルコールであることを示す判断材料となります。
エタノール(CH₃CH₂OH)やプロパノール(CH₃CH₂CH₂OH)などの一級アルコールは室温でのルーカス試験では反応が観察されません。